薬味の効能

「薬味(やくみ)」はその名の通り、
「薬」としての効能と、そばの「味」の引き立て役としての働きを併せ持ちます。

薬味の「薬」としての効能には、
○口中を刺激して唾液の分泌をうながし、食欲を盛んにする(食欲増進剤)
○胃の粘膜を刺激して、その働きを活発にする(健胃剤)
などの働きがあります。

また、「味」については、
○露払いとして口をさっぱりさせる
○口直しとして口中に残る味をいったん消すことで、最後まで飽きずに料理が食べられる
○料理の持つ臭みや味の癖を消す
などの効果があります。

そばには、大根おろしや、山芋や長芋のすりおろし、生卵なども用いられることも多くあります。しかし、一般的にそばの薬味と言ったら、ねぎとわさびと唐辛子(とうがらし)が用いられることが多く、一般的にこの3つが「薬味」として掲げられています。

これら3つの薬味の効能についてまとめます。

■ねぎ

○ねぎの香りとほどよい辛味が、
口中を快く刺激して食欲を促します(食欲増進)。
○また、胃の粘膜も刺激し、その働きを活発にします(消化機能向上)。
○そばに多く含まれているビタミンB1の吸収を高めることから、
疲労回復の効果があります(疲労回復)。
○ねぎの白い部分に含まれる辛味の「アリシン」
(正確には「アリイン」で、口の中で噛んで潰すことにより、アリシンに変わります)が血行をよくし、からだを温めてくれます(血行改善)。
「アリシン」は、硫黄化合物の1種で、独特の臭いの元になるもので、
にんにくにも含まれます。
○同様に、「アリシン」は細胞の免疫細胞に働きかける「ヘルパーT細胞」を活性化する働きを持っています。風邪ウイルスの体内への侵入を防ぎ、また、喉や口の中で風邪のウイルスの繁殖を抑えることで、症状を軽くします(風邪の症状改善)。

■わさび

唐辛子が「かけそば」など、主に温かいそばに用いられるのに対し、
わさびは「ざるそば」や「盛りそば」など、
ほとんど冷たいそばに用いられます。
○口中を刺激して唾液の分泌をうながし、食欲を盛んにします(食欲増進)。
○胃の粘膜を刺激して、その働きを活発にします(消化機能向上)
○口中に残る味をいったん消す口直しになることから、料理を最後まで飽きずに食べ切れるようになります。
○そばに含まれているビタミンB2の働きを高めることで、皮膚や髪なども含め、細胞の再生や新陳代謝を促します。また、脂質や糖の代謝も助けます。
○わさびの辛味は、アリルイソチオシアネートという揮発性の成分で,強い抗菌・殺菌作用を持ちます(抗菌・殺菌作用)。昔からわさびと一緒に食材を摂ると、食あたりしないと言われてきましたが、わさびには、大腸菌やサルモネラ、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌など、多くの食中毒菌の増殖を抑える働きがあります。

■唐辛子

わさびが主に冷たいそばに使われるのに対し、
唐辛子の辛味は熱に強く、温かいそばに好んで使われます。

また、七味唐辛子には、胡麻・麻の実・けしの実・山椒・陳皮(みかんやゆずの皮を乾したもの)・青海苔など、優れた効能を持つ粉末がミックスされています。
○七味に入っている陳皮などの苦味成分と、唐辛子の辛味成分カのカプサイシンは、胃粘膜を保護し、消化吸収を高め、食欲を増進させます(食欲増進、消化機能向上)。
○カプサイシンには、血行を良くし、発汗を促す働きがあります(発汗作用)
また七味に入っている陳皮も血行を促進します。
○カプサイシンには脂肪を分解する酵素リパーゼを活性化させる働きがあります。 体内の脂肪を燃やし、肥満を防止します(肥満予防)
○からだに栄養素を摂り入れやすくし、体質改善などに働きかけます(滋養強壮)。
○強烈な辛味は、料理のにおいや味の癖を消してくれます。

こうして薬味の効能を知ると、これらを用いた先人のすばらしさに思わずため息が出てしまいます。
そばだけ食べても十分な栄養素が含まれているとされていますが、つけそばや、かけそばは、薬味と相まって、なお一層低カロリーで、からだに役立つ成分を提供してくれる食べ物になっていると言えます。