手延べそばって?~手打ちそばとの違い

「手延べ」の麺というと、そうめんでは「揖保の糸」や「三輪そうめん」が有名ですね。贈答にもよく用いられます。
おいしいけれどちょっと高い、これが、みなさんの「手延べ」に持つイメージではないかと思います。

でも「手延べ」ってなんなのでしょう?「手打ち」とどう違うのでしょうか?

「手打ち」の場合には、生地を麺棒などで薄く延ばし、包丁で麺の形に切って作ります。すなわち、生地を平にして切って作るのが「手打ち」です。

これに対し、「手延べ」の場合には、練って固めた生地を、ねじりながら引っ張ってだんだん細く延ばしていって麺にしていきます。生地を麺棒などで薄く延ばし、包丁で切って作る「手打ち麺」と違い、「手延べ麺」は、生地をねじりながら編み込むように延ばしていくものです。

生地を切らずに、引っ張って細くしていく作業には、大変な労力と時間がかかります。手延べの持つ高級感は、この手間から来るものなのです。
この切らないで作ることは、麺に大きな影響を与えることとなります。

「手延べ麺」は、小麦粉に食塩と水を混ぜてよく練り、縒り(より)をかけながら引き伸ばしと熟成を何度も繰り返し、乾燥させるという方法で作ります。

グルテンは小麦粉の中に含まれる胚乳内の貯蔵タンパク質であるグリアジンとグルテニンが、水分により結び付くことにより網目状になり、グルテンを形成します。
生地を引っ張り延ばすためには、小麦粉に入れる水の量も多めになります。グルテニンとグリアジンの網目の安定した、引き締まった生地を作るためには、塩も加えられます。塩を加えることにより、生地がベタベタにならずに、コシの強い麺ができ上がります。
そして、網目状ののグルテンを形成し、コシが強い麺を作ります。

麺が切れないように、ひねりを入れて延ばしては休み、休んではまた延ばすことを繰り返すことで、寝かす時間があることから、その間に生地は熟成されます。
このように水の量を多くして、時間をかけて麺を熟成させることを「多加水熟成」と言います。

■グルテンと食感

「手延べ」は、グルテンの形成は、網目状に密になり、方向性の強い配列をしているのに対して、「手打ち」は、グルテン組織が粗く、方向性は弱くなります。
このように「手延べ」と「手打ち」ではグルテンの形成が異なることから、この2つは、食感も大きく異なります。

「手延べ」と「手打ち」を混同している人も多く、「手打ち」の食感は、歯応えが硬い(コシが強い)と思っている人も多いのではないかと思います。
しかし、「手延べ」は硬く、特に弾力感の強い食感を持ちます。口当たりがなめらかで喉越しがよく、細くて柔らかいが、強靭で、弾力のある歯応えに歯切れがいいという独特の食感を持ちます。

これに対し、「手打ち」は本質的には歯応えが柔らかく、ソフトな弾力感にのびがあり、粘りのある歯当たりを持っています。
ちなみに「機械麺」の場合も、平たくした生地を切って麺にするのは「手打ち」と同じですが、一定方向にロール圧延をする結果、「手打ち」よりは方向のあるグルテンになり、食感もやや硬めで弾力的になります。

「手延べ」は原則として乾麺にし、これに対し「手打ち」は原則生麺です。麺についても「手打ち」のほうがほうが太めの麺が多くなります。

■外二八~手延べそば

「手打ちそば」の中にも、そばの実の中心をすり潰した更科粉で作ったそばは、ツルツルと口当たりがなめらかで、「手延べ」におけるグルテンのような独特のコシを持つとされています。しかし、そば粉のたんぱく質は、グルテンを形成しないので、熟成したグルテンの味わいや歯ごたえは望めません。グルテンは小麦にだけ含まれるタンパク質です。小麦粉をつなぎに用いてしかできないことになります。独特のコシを持つ「手延べ麺」には、グルテンの形成が不可欠になります。

ですので、熟成した小麦粉のグルテンの食感を持つ「手延べそば」を作ろうとした場合には、当然小麦粉の割合を多くしなければならないことになります。

そこで「手延べそば」におけるそば粉の配合は、小麦2割にそば粉8割の二八そばに対して、そば粉2割に小麦粉8割の「外二八(外8割)」になっています。

ここで「そば」としての記載についてですが、食品として「そば」と言うためには、日本農林規格(JAS)では、そば粉の配合率が重量比30%以上、生めん類の表示に関する公正競争規約でもそば粉が3割以上含まれなければならないとされています。しかし、これは生麺の場合であって、乾麺に関しては、加工食品品質表示基準(平成12年3月31日農林水産省告示第513号)、ならびに乾めん類品質表示基準(平成21年4月9日農林水産省告示第488号)に従います。
これによると乾めん類のうち、「そば粉を使用したもの」は、そば粉の割合に関係なく「干しそば」「手延べ干しそば」(干しそばのうち熟成と手で延ばす作業が認められるもの)として記載が許されています。