ダッタンそば

そばは、大きく分けると普通そば(普通種)、ダッタンそば(韃靼種)、宿根そば(宿根種)の3種類があるとされています。このうち多年草の宿根そばは、野菜として「葉」が食用にされるので、そばの原料として、「実」が用いられるそばは、普通種のそばとダッタン種そばの2種類になります。

韃靼(ダッタン)そばは、そばの中でも、ルチン(フラボノイド系ポリフェノール)含量が高い品種と言われていて、普通種のそば粉の何と約100倍ものルチンが含有されていると言われています。そのためサプリメントの活用を目的に栽培され、ルチンなどの抽出に用いられいます。

普通種が、日本、ソ連、中国、ヨーロッパ、アメリカ、カナダ、南アメリカ、アフリカなど世界に広く栽培されているのに対し、ダッタンそばは、中国雲南省、四川省、チベット自治区、内モンゴル地区、ネパールなどの、高度2,000m以上のヒマラヤの山岳地帯で栽培されています。中世の頃ダッタン人(モンゴル系遊牧民族)によってヨーロッパにもたらされたために、この名がつきました。ダッタンそばは、わたしたちが普段食べているそばよりもさらに気候の厳しい土地でも育ったそばと言えます。

ダッタンそばは、独特な強い苦味があるから「苦そば」とも呼ばれ、これに対し、普段わたしたちが食べている普通種のそばは、匂いと味が甘いので「甘そば」
または「甜蕎(苡)(てんきょう)」などとも呼ばれています。

ダッタンそばは、中国運南省を中心とする高原地帯が主要生産地で、そこに住む少数民族の彝族(いぞく)が主食としていました。中国南部の山岳地帯や、ヒマラヤ地方では、よく加熱したダッタンそばを、餅や団子にしていました。ダッタンそばを食べているこれらの民族は、生活習慣病の発生率が低く、健康・長寿とされています。

ダッタンそばは、古くからその効能を認められていて、中国の金王朝(1115 - 1234年)の時代の『政和政類本草』という薬草書の中に、「胃腸を丈夫にして、気力を増す」ものとして、ダッタンそばについての記述があります。さらに明の時代(1368-1644年)の『本草綱目』には「苦蕎麦」という項目があり、昔から漢方薬のひとつとして使われていたようです。 現在でも中国では、ダッタンそばを、糖尿病の漢方薬として販売している店もあるそうです。

殻のついたダッタンそばの実は、わたしたちが知っている普通種とは、形の色もまるで異なります。
普通種の実はブナの実に似た三角形状の突起型をしていますが、ダッタン種の実は角張ったところが少なく表面はザラザラしています。粒も小さく、むしろ小麦の種実に似ています。

どちらも一年草ですが、自家受粉できない普通種に対し、ダッタン種は小麦や稲などと同じように自家受粉できます。少ない花粉で、虫や風などを介した受粉を待たずして、効率よく実らせることができることから、ダッタンそばは生産の高いそばとされています。

花の色も普通種の白に対して、ダッタン種は淡緑色で、実の色も、普通種の茶色に対して、ダッタンそばの実は、黄色をしています。
ダッタンそばの実に含まれるこの黄色の色素は、製粉設備まで黄色く染めてしまうほど、かなり強烈な色をしています。

ダッタンそばで挽いた粉は、とても水和しやすく、水を落とした箇所のそば粉だけで水を独り占めしようとするので、水回しに苦労し、つなぐのがとても難しいそうです。うまく繋ぐには、少量ずつ多段階にわたって加水していくのがコツだそうです。

ダッタンそばで作ったそばがきの色は、濃い濁った黄色になります。味は「苦そば」のとおり一口でギブアップしてしまうほど苦い味をしています。

このダッタンそばの苦味をクリアして、食べるには、普段わたしたちが食べている「甘そば」を半分加えることにより、すごくおいしく食べられるようになるそうです。
現在、ダッタンそばを出しているお店は、つなぎに小麦の強力粉を用いたり、「甘そば」の1番粉である更科(さらしな)粉を用いたりすることで、ダッタンそばの苦味をさまざまに克服し、おいしくなおかつ栄養価の高いそばを提供しています。