そばの栄養

精製された白米や小麦粉は、それだけで食べることはありませんが、そばは、
それだけで食べても、良質なタンパク質ほか、アミノ酸・ミネラル・ビタミン
など、たくさんの栄養素を含有した栄養バランス食品になっています。

■フラボノイド系のポリフェノールであるルチン(rutin)が多く含まれている

○そば粉に含まれているルチン強力な抗酸化作用を持ちます。有害な活性酸素を体内から除去する働きをすることから、老化や、心臓病や動脈硬化、高血圧などの生活習慣病の予防予防します。
○ルチンはもろくなった毛細血管を修復・強化し、血圧を降下する働きがあります。
動脈硬化による脳出血を予防します。
○抗酸化作用により、活性酸素が大量に発生する肝臓内で、活性酸素による肝細胞の破壊を予防し、肝臓の線維化を防ぎます。
○活性酸素を体内から除去する抗酸化作用により、活性酸素がインスリンを分泌する膵臓のβ細胞を傷つけることを防ぎ、膵臓からのインスリンの分泌を促進します。
また、リン脂質の細胞膜が酸化すると、筋肉細胞内の脂質量が減ることで、血糖値を下げるインスリンに対する抵抗性が高くなりますが、ルチンの抗酸化作用は、このインスリン抵抗性を減らすことによって、糖尿病治療を効果的にします。
○消化酵素トリプシン、ブロメラインと一緒に働くことによって、変形性関節症の改善に有効に働きます。

■そばはアミノ酸(のバランス)スコア100、

白米や小麦粉に少ない必須アミノ酸リジンも多く含まれている

そばには、精白米やうどんと比較しても、多くのたんぱく質が含まれています。そばに含まれるたんぱく質の特徴は、何よりもそれを構成しているアミノ酸のバランスがいいことが言えます。
たんぱく質を構成する20種類のアミノ酸のなかでも、特に人間のからだにとって摂取することが不可欠なアミノ酸を、必須アミノ酸と言います。必須アミノ酸とは、たんぱく質の生成になくてはならない栄養素であるにもかかわらず、人間の体内では作られず、食品から摂らなければならないとされる人間のからだにとって不可欠なアミノ酸を指し、9種類あります。
たんぱく質の良し悪しは、この9種類の必須アミノ酸のバランスによって決まります。

必須アミノ酸の理想バランス量を100としたアミノ酸スコア※では、何とそばは100!
そばのたんぱく質がいかに優れたものであるかがわかります。
※プロティンスコアと表記されていた時代もありましたが、
現在は、必須アミノ酸量に基づいたアミノ酸スコアで統一。

これに対し、精白米のアミノ酸スコアは61 (1985年スコア)。
9種類ある必須アミノ酸のうち、精白米でもっとも不足している
必須アミノ酸は、リジンとされています。
小麦粉(薄力粉)は、精白米よりさらに必須アミノ酸リジンの含量が少なく、
アミノ酸スコアは42(同上)になっています。
そばは、白米や小麦粉には不足している、この必須アミノ酸リジン(lysine)を多く含みます。

○リジンには、細胞や細菌・ウイルスの侵入を防ぐ抗体を作り、感染症に対して抵抗力を高める効果があるとされています。口唇ヘルペスなどの疱疹(ほんしん)の原因となるウイルスから感染を予防し、免疫力を高める効果をもたらします。
○リジンは、たんぱく質の吸収を促進させ、体の組織を修復し、ブドウ糖の代謝をよくし、からだの疲れを取ってくれます。リジンが不足すると疲れやすくなり、集中力の低下ほか、頭痛、吐き気、目の充血、貧血なども見られることがあります。
○リジンは、脂肪分解酵素であるリパーゼの働きを活性化させ、中性脂肪酸を脂肪酸とグリセリンに分解する働きを助けます。アルコールの摂取により、
弱った肝臓機能を高めてくれます。
○リジンは、骨を丈夫にするカルシウムの吸収を促進する働きを持っています。リジンが軽度に不足したような場合でも、尿中で、吸収されないカルシウムの量が増えることがあるとされています。

■日本人に不足しがちな特にB群が豊富

○そばには、お米の4倍、小麦粉の2倍のビタミンB1、お米の4倍以上のビタミンB2が含まれていると言われています。
江戸時代栄養の多くを白米で摂取する人々の間で、
「江戸患い(えどわずらい)」と呼ばれた、ビタミンB1の欠乏症である
脚気(かっけ)が流行した際も、そばを食べることで、改善されたと
言われています。
江戸で、うどんよりもそばが主流となったのには、
水質や醤油の問題、労働や文化的な要因などがありますが、
脚気予防も大きな理由と言われています。
ビタミンB1は、疲労回復、食欲不振などに効果があり、
居眠り疲労感をなくし、いらいらする神経を鎮めます。
また、海馬を含む脳の正中部から側頭葉の萎縮を抑えることがわかり、
アルツハイマー型認知症にも有効であることが学会で発表されています。
また、ビタミンB2は皮膚や粘膜の健康を保つ効果もあります。
口内炎や口角炎、脱毛や爪のまわりのささくれなども防ぎます。

○そばには、「若返りのビタミン」と呼ばれるビタミンEも含まれています。 ビタミンEは、脂質に溶けることから、細胞膜のリン脂質(不飽和脂肪酸)に
入り込んで、体内で作られた活性酸素を中和する働きをします。
細胞の老化や変異を防止することから、
がんや、心筋梗塞、脳卒中などの生活習慣病の予防になるとされています。

■リノール酸により心疾患のリスクを下げる

リノール酸(linoleic acid)多価不飽和脂肪酸は不飽和脂肪酸の1種で、動物が生体内で合成できず,食物によって摂取する必要のある必須脂肪酸です。

リノール酸は、血液中のコレステロール量を一時的に減少させる働きがあります。
体温で溶け切らずにダマが発生する飽和脂肪酸がLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪を増やす(心疾患のリスクを高める)ことも報告されているのに対し、リノール酸は人間の体温で溶け切ってしまうことから、
動脈硬化を予防する働きがあるとされています。
不足すると髪や皮膚のぱさつきや免疫力の低下が見られるとされています。

■そばには食物繊維、ヘミセルロースが多く含まれています。

白米には含まれない食物繊維もそばには多く含まれています。
食物繊維とは、消化酵素によって消化されない食物に含まれている難消化性成分を言います。多くは炭水化物のうちの多糖類です。
ヘミセルロース(hemicellulose)は、セルロース、ペクチンと並ぶ食物繊維です。
食物繊維の効果としては、排便促進(便秘予防)や肥満防止、大腸ガンの予防、食品中のダイオキシンなどの有害物質を排出するなどの働きがあります。

昔から、細菌が繁殖しやすい未消化の肉とは違って、食物繊維は腸を刺激して活発にさせるので毒が作られにくいとされてきました。
特に精白していない全粒穀物は、食物繊維によって、
腸内の疾患のリスクを下げることが科学的研究によって立証されてきました。

また、食物繊維は、腸内でビフィズス菌を殖やし、逆にウエルシュ菌などの有害菌を減らすことがわかっています。ビフィズス菌は腸内の腐敗を防止、
免疫を強化し、感染を防止し、腸の蠕動運動を促進するとされています。 食物繊維は、 こうした腸内細菌と一緒になって、ビタミンB群の合成を助けるとされています。

ほかにも食物繊維には、糖尿病予防、脂質代謝の調節による動脈硬化の予防の
働きもあるとされています。

最近では、米ぬかのヘミステロースは、シイタケ菌の酵素によって分解され、
多糖類アラビノキシランになり、これが免疫強化のNK(ナチュラルキラー)
細胞のを活性化し、ガン細胞の増殖を制えることがわかってきました。

■アンジオテンシン変換酵素(ACE)

ルチンとは無関係に、そばには、血圧上昇をもたらすアンジオテンシン変換酵素を抑制する作用があるとされています。そばを食べることで直接的に血圧上昇を抑えることができるとされています。

■精白した米や小麦粉に比べて、ミネラルも豊富に含まれる

そばには、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛などのミネラルも豊富に含まれます。この中でリンは、レトルト食品・加工食品に食品添加物として使用されていることから、摂り過ぎることはあっても、不足することはまずないと言われています。
これに対し、不足しがちなミネラルとしては、マグネシウム、亜鉛があります。
マグネシウムや亜鉛は、精白した米や小麦粉にあまり含まれませんが、
そばには多く含まれます。

○マグネシウムは、タンパク質の合成やエネルギー代謝に関与する栄養素です。筋肉の収縮、血圧や体温調整、血糖値の調整などに効果をもたらします。
たんぱく質の合成の過程に関与し、抗酸化作用のあるグルタチオンの合成を
助け、活性酸素の蓄積を防ぐことで、疲労の蓄積を防ぎます。
そのため不足すると、からだの疲れが取りにくくなります。

マグネシウムのもっとも重要な働きとしては、動脈硬化の予防や治療が言われています。高血圧の予防ほか、最近では循環器系病気の改善にもマグネシウムが
指摘されるようになりました。

マグネシウムは、筋肉細胞に入るカルシウム量の調整を行います。
筋肉の収縮は、筋肉細胞の中にカルシウムが入ることによって起こります。
マグネシウムが不足すればカルシウムの調節がうまくいかなくなり、
痙攣(けいれん)やふるえなどの症状をもたらします。
血管壁にある筋肉で痙攣が起これば、狭心症や心筋梗塞になります。
アメリカなどでの研究により、カルシウム摂取が多くてもマグネシウム摂取量が少ないと、虚血性心疾患が非常に多いことがわかっています。
また、マグネシウムをたくさん含む硬水を飲んでいる地域には、
脳卒中や心臓病が少ないという研究データもあります。

さらにマグネシウムには、糖をエネルギーに変換する働き(代謝促進)もあります。1日あたりのマグネシウムの摂取量が多くなると、糖尿病発症の危険度が低くなることも立証されています。

こうしたマグネシウムは、昆布・ひじき・のり・ごま・アーモンド・落花生などにも含まれていますが、毎日たくさん食べ続けることは難しい食品です。
それに比べ、主食にできるそばは、マグネシウムの摂りやすい食品と言えます。

○日本人は常に不足しがちと言われている亜鉛も、そばには含まれます。
亜鉛は200種類以上もの酵素を合成し、抗酸化作用を活発化し、タンパク質の合成や分解に関与するなど、発育を促し、傷の回復を早めるなど免疫機能にも
関与し、重要な働きをになっています。
また、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞のインスリンの合成・貯蔵・分泌に深く関与し、亜鉛が不足するとインスリンの分泌遅延により血糖値が上昇し、糖尿病の原因に繋がるとされています。さらに亜鉛自体がインスリンに似た作用を示すとされています。

亜鉛は、日本人は常に不足しがちと言われていて、味覚の正常化にも役割を果たしています。最近日本の若い人たちにも見られる味覚障害は、この亜鉛不足が原因とされています。